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2009.03.01 Sun

燕の歌 ガブリエレ・ダンヌンチオ
弥生(やよひ)ついたち、はつ燕(つばめ)、
海のあなたの静けき国の
便(たより)もてきぬ、うれしき文(ふみ)を。
春のはつ花、にほひを尋(と)むる。
あゝ、よろこびのつばくらめ。
黒と白との染分縞(そめわけじま)は
春の心の舞姿。
弥生来にけり、如月(きさらぎ)は
風もろともに、けふ去りぬ。
栗鼠(りす)の毛衣(けごろも)脱ぎすてて、
綾子(りんず)羽ぶたへ今様(いまよう)に、
春の川瀬をかちわたり、
しなだるゝ枝の森わけて、
舞ひつ、歌ひつ、足速(あしばや)の
恋慕の人ぞむれ遊ぶ。
岡に摘む花、菫(すみれ)ぐさ、
草は香りぬ、君ゆゑに、
素足の「春」の君ゆゑに。
けふは野山も新妻(にひづま)の姿に通ひ、
わだつみの波は輝く阿古屋珠(あこやだま)。
あれ、藪陰(やぶかげ)の黒鶫(くろつぐみ)、
あれ、なか空(そら)に揚雲雀(あげひばり)。
つれなき風は吹きすぎて、
旧巣(ふるす)啣(くは)へて飛び去りぬ。
あゝ、南国のぬれつばめ、
尾羽(をば)は矢羽根(やばね)よ、鳴く音(ね)は弦(つる)を
「春」のひくおと「春」の手の。
あゝ、よろこびの美鳥(うまどり)よ、
黒と白との水干(すいかん)に、
舞の足どり教へよと、
しばし招がむ、つばくらめ。
たぐひもあらぬ麗人(れいじん)の
イソルダ姫の物語、
飾り画(ゑが)けるこの殿(との)に
しばしはあれよ、つばくらめ。
かづけの花環こゝにあり、
ひとやにはあらぬ花籠を
給ふあえかの姫君は、
フランチェスカの前ならで、
まことは「春」のめがみ大神(おほがみ)。
「海潮音 上田敏」 より
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2009.01.22 Thu

何よりもまず音楽を
そのために
よりおぼろげに虚空にとけて
その内に何ものも重くのしかからず
何者の跡にもとどまらぬ「奇数脚」を好め
また言葉を選ぶにも
何らかの思い違いを恐れるなかれ
「獏」と「明確」が一つに結ばれる
灰色の歌より尊いものは何もない
中略
われらがなお求めるのは陰影
「色彩」ではなくひたすらに「陰影」をのみ!
陰影だけが夢を夢に
フリュートを角笛にあわせる
「詩法 シャルル・モリスに から一部抜粋/ヴェルレーヌ詩集」より
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2009.01.21 Wed

「夜のパリ」
ジャック プレヴェール
3本のマッチを 1本ずつ擦る 夜の中
はじめは キミの顔を見るため
次のは キミの眼を見るため
最後は キミの唇を見るため
残りの暗闇は 今のすべてを思い出すため
キミを抱きしめて
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2009.01.20 Tue
思い出の本ばかり集めた本棚の真ん中には
一冊の詩集が大切にしまってあります。
人がどんなに愛されて生まれてくるのか
わたしが、一番実感できる本。
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「生まれくるいのちに」
くさめをしても
笑っても
一番最初にお前に手がいく
わたしの日々の振動が
直接伝わる恐ろしさに
じっと身体をすますのだ
痛いだろうか
私が世界に縮こまれば
おまえの寝間も小さくなって
眠りのときを壊すだろうに
お前を用意するための
揺れる私の道行きだから
いまから負けずにいておくれ
海にやわらにつかりながら
おまえはあわく透明なさかな
やがて ひとになる日のために
尾びれに光を吸い込んで
生まれの意味を噛んでおくれ
この詩の作者は・・・・24歳のときうちのママ。
私が生まれるにあたって
母が書いてくれた詩集です。
わたし、とっくに24を過ぎましたが
うまれの意味はまだよくわからず、
海をさまよう毎日・・・苦笑
だけど
昔の母から今の私に届く手紙に並ぶ
かけがえのない想いの数々に
何度励まされたことか。
ありがと、ママ。
詩集なんて立派なものは無理だけど
未来の自分と誰かに
わたしも何かを残しておきたいな。
ブログ書籍化!
なんて手もあるし
時代は便利になったよね。
残す方法はあっても、
残す中身の方がサッパリだけどね。
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2009.01.14 Wed

もはや知ることを欲せざれ
いにしへひとの行方と 過ぎにし時とを
唱へや唱へ ルフランの調べ
こぞの雪 いづこに去にしと
わがキミよ いかなるときも
「みなどこに?」と問うてはならい
問うてもこの同じルフランに立ち戻るばかり
こぞの雪 いまいずこ
ヴィヨン
去年の雪は 今どこに?
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2008.12.29 Mon
落日はその最後の光を投げかけていた
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風は青ざめた睡蓮を揺らして
葦の間のその大きな睡蓮は
静かな水のうえでもの悲しく光っていた
わたしは一人さまよいながら、心の傷を
池に沿ってめぐらしていた、その柳のかげに
おぼろな霧が呼び出した大きな
ミルク色のまぼろしがうちひしがれて
泣きながらシマシギの声に
羽ばたいて呼び合うシマシギの声に混じる
その柳のかげに わたしは一人さまよいながら
心の傷をめぐらしていた、そうして夕闇の
熱い経かたびらが降りてきて、最後の
落日の光はその青ざめた波のなかに溺れ
睡蓮も、葦の間のその
大きな睡蓮も静かな水の上に溺れる
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